中国の新聞業界が大きく様変わり、部数増と広告獲得に向けた競争が激しさを増している。新聞社の意見の相違も一部で現れ、報道姿勢をめぐりさまざまな問題も続出している。
北京市内のすべての地下鉄駅で今月から、地元紙「北京娯楽信報」が無料で配られるようになった。同市地下鉄で初のフリーペーパーということもあり、発行される10万部は連日、1時間足らずでなくなり、まずまずの滑り出しという(同紙関係者)。
同紙は1981年に戯曲・映画の専門紙として創刊、2000年に総合紙となった。一時、北京の5大紙の一つに数えられたが、次々と現れるライバルに読者を奪われ、最近は不振が続いていた。フリーペーパーへの変身は、生き残りをかけた大きな決断だったといえる。
地元の記者によると、同じく経営不振から北京のもう一つの総合紙「華夏時報」は7月、経済専門紙へ変身したが、売り上げは思うように伸びず、今でも苦戦を強いられているという。
中国では、都市部住民向けの総合紙を「都市報」と呼ぶ。共産党の機関紙と違って、芸能、社会ニュースなどを大きく扱い、市民から支持されている。販売と広告の両面で収益が高いため、大手新聞社はそろって「都市報」を発行。北京では、「人民日報」傘下の「京華時報」(01年創刊)と「光明日報」傘下の「新京報」(03年創刊)が2強と呼ばれている。
しかし、激しい競争によって報道合戦が過熱し、さまざまな問題も起きている。今年5月、「新京報」が「著名なロック歌手が元妻の夫を批判」と報じたが、歌手は「取材を受けていない」と激怒、同社前で取材用車両に火をつけた。歌手は現行犯で逮捕されたが、多くの北京市民は歌手に同情し、新聞社の報道姿勢を批判した。
また、今年10月、陝西省の猟師が絶滅したといわれる華南トラを撮影したと主張、その写真の真偽をめぐって大論争が起きた問題で、地元紙「華西都市報」が写真を本物と伝えたのに対し、広東省の「南方都市報」は偽物の可能性が高いと報道、両紙の見方が真っ向から対立した。新聞を「政府の宣伝機関」と位置づける中国では、こうした意見の対立は珍しい。
ある中国人記者は「地元の読者は本物説を読みたいし、ほかの地域の読者は偽物説を読みたい」と語り、読者に迎合する傾向が新聞にあることを認めた。
産経新聞